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2016.2.17
大分・湯布院に移築  太宰が暮らした「碧雲荘」 旅館経営者が譲り受け
 
       
 五所川原市(旧金木町)出身の作家・太宰治(1909〜49年)が一時暮らした東京都杉並区の民家兼アパート「碧雲(へきうん)荘」が、大分・湯布院に移築されることが16日、分かった。湯布院の旅館経営者が所有者から譲り受け、ボランティアの拠点として活用する見通し。
建物の解体は既に始まっており、杉並区での保存を目指してきた団体の関係者は「地元から移るのは残念だが、建物が残ることになってよかった」としている。

大分・湯布院に移築されることになった「碧雲荘」
=16日、東京都杉並区
 碧雲荘を譲り受けたのは、大分県由布市湯布院町で旅館「おやど二本の葦束」を経営する橋本律子さん。橋本さんによると、昨年12月に知人から碧雲荘の保存活動について聞き、所有者と面会した結果、建物自体は無償で譲り受けることになった。

 橋本さんの旅館は10棟以上の古民家を活用したもので、移築の技術を持つスタッフもいる。今回もそのスタッフが杉並区で作業している。

 移築先は旅館付近にある橋本さんの私有地で、解体した部材は腐食しているものなどを除いて陸路で湯布院へ運び、今年秋ごろまでに組み立てる計画。移築した碧雲荘は、子ども向けの読み聞かせなどを行う場として活用する方向。建物の周囲には樹木を植えて「文学の森」といった空間をつくりたいという。橋本さんは取材に「保存に努めてきた方々が訪れた際に利用してもらえれば」と語った。

 碧雲荘をめぐっては、区がその敷地と隣接地に福祉施設などを建てる計画のため、地元有志らが「荻窪の歴史文化を育てる会」(会長・岩下武彦中央大学教授)をつくって署名活動を展開、本県からも多数の署名が寄せられた。ただ、昨年末には、所有者から同会との碧雲荘に関するやり取りを終えたい旨の連絡があったという。同会によると、区は碧雲荘の敷地を取得しており、所有者に今年4月ごろに更地にすることを求めていた。