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2017.1.30
津軽塗など 本県伝統工芸品  首都圏市場に売り込みを
         昨年企画展 売上好調  「新鮮さ」が要因
 
       
 今こそ伝統工芸品を売り込め―。
昨年末、東京・六本木で開かれた企画展「青森展」は好調な売り上げを記録した。
しかし、その大きな要因は意外にも「新鮮さ」。県内では工芸品の代表格とされる津軽塗でさえ、首都圏の一般消費者にはまだまだ知られていないことも分かった。
伝統工芸品の産地が販路拡大に悩む時代に入って久しいが、「本物を求める消費者は確かにいる」と関係者。市場への熱心なアプローチが生産者に求められている。


津軽塗などが好評を得た「青森展」
=昨年12月、東京・六本木
「青森展」は、伝統工芸品の販路開拓を目指し、県が昨年12月に1カ月間、東京ミッドタウンで全国の伝統工芸品を販売する店舗「THE COVER NIPPON」(ジカバー・ニッポン)で開いた。

 県内の伝統工芸品はこれまでも首都圏の百貨店の催事などで販売されてきたが、長期間の企画展は今回が初めて。県地域産業課によると、津軽塗、こぎん刺し、津軽打刃物などを県内14事業所が出展し、期間中に計約400点を販売、売上金額は計200万円以上に上った。

 同店舗の運営会社「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」によると、年末は繁忙期に当たり、工芸品を新調する客も目立つ時期だが、販売点数は予想以上だったという。

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 好調の要因を分析したところ、浮かび上がったのは「県内の伝統工芸品が新鮮に映った」という点。「津軽海峡は知っているが、津軽塗は知らなかった」という客もいるという。それでも、津軽塗の売上金額は全体の半分ほどを占めた。

 「『伝統工芸品は売れない、売れない』と言われるが、市場はちゃんとある」と同社の赤瀬浩成社長。産地支援のために全国を回っているが、市場の存在をしっかり認識して的確に対応するよう本県の生産者にも求める。

 奇抜な商品開発も一つの方策だが、全ての生産者ができるわけではない。むしろ、産地全体として持続するためには、インターネット交流サイト(SNS)で地道に情報発信し、訪れる客のために工場を清掃して看板も掲げる―といった小さなことが重要と指摘。
 「例えば、SNSで『きょうは○○○を作ります』と発信するだけでも興味ある人は見る。そんな時代です」と意識改革を促す。

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 「作り手が自立するのが理想的な形」と赤瀬社長。「作り手自らが情報を発信し、消費者と出会い、商品を買ってもらう。消費者は作り手の思いを理解したいと思っているから、直接のやり取りを望んでいる」と訴える

 赤瀬社長によると、伝統工芸品の販路開拓の分野では本県は後発組だ。全国を見れば、販路開拓のエリアを首都圏に絞って10年近く取り組み、高い成果を上げている県もあるという。「一定期間、首都圏に徹底的に売り込み、(販売の)基盤をつくるのも一つの考え方だろう」と見解を示しながら、本県関係者に腰を据えた取り組みを期待した。

 県は「青森展」の成果を出展事業所にフィードバックし、今後の販売戦略などに生かしてもらう考えだ。