東京ぶらり散歩  伍 
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青森人の東京    太宰治「バー・ルパン」

ネクタイにベスト姿、カウンターの隅の木椅子にあぐらをかき談笑している太宰治。昭和21年秋、東京・銀座の「バー・ルパン」でのひとこまを、写真家の林忠彦が撮影した有名な写真だ。
 
「バー・ルパン」は、泉鏡花、菊池寛、久米正雄、永井荷風、川端康成、林芙美子、藤田嗣治、東郷青児、岡本太郎、小山内薫、宇野重吉、滝沢修など、文壇・画壇・演劇人ら多彩な著名人に愛された店。



店は昭和3年。怪盗アルセーヌ・ルパンから拝借した店名で、店の顔ともいわれる看板はモーリス・ルブランの原書の口絵。現在のようなヤチダモのカウンター・バースタイルになったのは昭和11年からで、カウンターや椅子など当時のままの姿を残す、銀座でも数少ない老舗だ。




当時の太宰といえば、戯曲「冬の花火」「春の枯葉」を発表するなど、執筆活動も活発に取り組む一方、無頼派の作家として坂口安吾や織田作之助と座談会に出席したり、一緒に飲み歩くことも多かった時期。それから一年半後の23年6月、玉川上水に入水し、39歳の波瀾にとんだ生涯を閉じた。


現在、太宰の定席だったカウンター奥には彼が愛用した椅子、そして壁には織田作之助、坂口安吾、太宰治の写真が飾られている。




「バー・ルパン」は、銀座5丁目のみゆき通り、文芸春秋ギャラリーわきの路地に入ってすぐ。
日曜 ・月曜日が定休日(祝祭日は休業し、その週の月曜日は営業)。
電話 03-3571-0750
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