東京雑感   銀座で涼を求めたんだ 2010.8.5



「サメでも暑いべさ」

 数寄屋橋のソニービルで、正面入り口わきに大水槽があって往来の人が群がっている。

 以前はサメ、エイ、ウツボが悠々と泳いでいたのに、この日は昼下がりで暑いのか、サメが2匹とも底にへばりついて動かない(写真1)
黒っぽいのがネムリブカとか。眠っていないようだが、微動だにしない。ウツボにいたっては岩穴に首を突っ込んだまま。

 これはソニービル全館で開催中の「43rd Sony Aquarium―3D沖縄美ら海(ちゅらうみ)水族館」の一コマ。
夏休み期間とあって連日家族連れでにぎわい、外国人観光客の姿も多く見られる。猛暑で汗だくの日々にあって、涼を呼ぶイベントが好評だ。

 それにしても今夏の東京は暑い。コンクリートジャングルで涼風など期待できない。ビル街にある数あまたのエアコンの屋外機がうなりを上げて放熱しているだろう。それが都心の気温のさらなる上昇を招いているのは間違いない。冷気に吸い込まれるように館内に入った。

 「3D映像見られるや」 

 館内にも水槽があって、ウミガメ、サンゴ礁にすむ魚が泳いでいる。
黒潮が流れる沖縄の海にすむ魚は美しい。鮮やかな色彩のサイケデリックな魚体に見惚れてシャッターを何度か切った。イロブダイだそうだ(写真2)
 
熱帯魚がたくさんいるが、自分が知っているのはディズニー映画「ファインディング・ニモ」で人気になったクマノミしか分からなかった。透明感のあるブルーの小魚に見入ってはしばし暑さを忘れた。

 2、3階では3次元(3D)テレビを体験できる。専用メガネを備えたスタンドが並んでいて、覗くと奥行きのある立体映像が楽しめる(写真3)
山原(ヤンバル)の森からの流れに沿ってマングローブの林、サンゴ礁、そして黒潮と心憎い演出で、居ながらにして沖縄の自然を体感できる。
 サンゴ礁では小魚が舞い、黒潮の海ではエイのひれが飛び出して見える。

 ご承知の通り、3Dテレビは微妙に異なる右左の目の画像を交互に表示することで立体映像を可能にするもので、特殊なメガネが欠かせない。米ハリウッドのSF映画「アバター」の大ヒットで世界的に3D映像の認知度が高まった。
 
 「魅力があるんだじゃ」

 3D映像には魅力と大いなる可能性を感じる。次世代テレビとして家庭で3D映像を楽しむ近未来を想像するが、娯楽ばかりでなく医療など他分野への応用も検討されている。
 3D放送をはじめ3Dコンテンツの拡充が待たれるところだが、3Dテレビ商戦は日本よりも米国市場で熱い。
 米国では映画界にけん引されるように放送制作会社が3D化に積極的なことが背景にある。パナソニックが今年3月に米国内で3Dテレビを先行販売し、韓国のサムスン電子とLG電子とでし烈なシェア争いを繰り広げている。ソニーも追随しているだろう。

 国内では地デジ(地上デジタル放送)対応の薄型テレビへの買い替えが進んでいて、3Dテレビに関しては様子見をするユーザーが多いのはしようがない。サバイバルを繰り広げるゲーム機業界が3D対応を急いでおり、年末から来年にかけて各社の動向が注目される。

 脱線ついでに書くが、メガネが必要のない3Dテレビにインテグラルテレビがある。手術を3D映像を通じて遠隔地から指示するなど医療分野での応用が検討されているが、残念なことに現状では画質が低く、コスト高が課題。スーパーハイビジョンで衛星放送を使うと億単位の資金がかかるので、実用化の目途が立っていない。
 
 「手を伸ばせば届くんだ」

 家電メーカーは今年を3D元年と位置づける。国内市場ではパナソニックが4月に先陣をきったのをはじめ、6月にソニー、7月下旬にはシャープ、東芝と国内大手が相次いで3Dテレビ市場に参入し、出そろった感がある。
 3D技術を前面に打ち出すことによって自社ブランドの価値を高め、薄型テレビの価格の下落に歯止めをかけたいというメーカー側の戦略が見え隠れする。

 ソニービル8階の「OPUS」では200インチの大スクリーンで沖縄美ら海水族館の「黒潮の海」を3D映像で見せている。ソニーの技術をアピールする格好の場であろう。
 同館の「黒潮の海」は深さ10b、幅35b、奥行き27b、水量7,500dという日本最大、世界でも屈指のアクアリューム。ジンベエザメ、通称マンタと呼ぶオニイトマキエイ、群れをなす回遊魚たちのダイナミックな動きを観察できる。

 専用メガネで見るのだが、最大で14bにもなるというジンベイザメがスクリーンを飛び出し、最前列に陣取った自分の1bほど先まで近づいて見えるのには驚いた。
 最前列といっても、スクリーンまで5bは離れているので飛び出しの具合、感覚が分かっていただけるだろうか。マンタしかり、魚の群れが近くまで寄ってきては反転して遠のいた。
 9分間の上映だったが、「黒潮の海」に潜った気分にさせられ感動した。OPUS内は撮影禁止なので、イベントの象徴であるジンベイザメを描いたポスターを撮った(写真4)

 最後に大水槽で大口を開けていた体長1b近いヤイトハタ(写真5)と館内で見たウミガメ(写真6)の写真を。少しでも涼を感じていただければ幸いだ。

「3Dの迫力には驚いたじゃ。高画像に加え高音質。臨場感があってデジタル時代を痛感したじゃ。だってアナログ人間だものさ。感動で鳥肌がたったけれど、決して冷房のせいではなかったべ。神秘な沖縄の海の生物に癒やされたんだ」

万年青年Y



※「3D沖縄美ら海水族館」は7月19日から8月31日までの44日間のロングラン開催。
開館時間は11:00〜19:00。

もくじ