東京雑感   宇宙さ目向げるべし 2010.5.21


 「仕分けで知ったんだ」

 宇宙航空研究開発機構の情報センター「JAXAi(ジャクサ・アイ)」(写真1)が熱いスポットになっている。宇宙飛行士の山崎直子さんが地球に帰還したのが4月中旬だったが、その後に政府の事業仕分けで「廃止」判定を受けたことでが然注目を集め、来館者が急増している。

 JAXAiはJR東京駅そばの商業ビル・丸の内オアゾの2階にある。2004年9月のオープンで、東京駅丸の内北口から徒歩1、2分、入場無料で誰でも気軽に入れる。
 内部はこぢんまりしている。広さが150 平方bなのでさもあらん。宇宙服(写真2)が展示されている。船外活動ユニットを装備した精巧なレプリカで、宇宙放射線を通さない素材に気体による圧力環境の維持、酸素供給と二酸化炭素の除去、温度制御などの生命維持装置を背負っている。顔の部分がくり抜かれて記念写真が撮れるようになっており、カップルが喜んでいた。

 中央にあって目を引くのがロケットエンジン「LE−7A」(写真3)
 日本の主力ロケット「H−UA」の第1段に使われるエンジンで、地上燃焼実験で使用された実物。4b近い高さで、全長53b、重量約300dのロケットをこのエンジンと2つのブースターで打ち上げる。ロケット本体と同様、エンジンも極限まで軽量化を図ったはず。スリムな外形は美しくもある。
 ミニシアターで国際宇宙ステーションに長期滞在している野口聡一さんの活動の様子を放映している。ほかに、パネルやインターネット端末でJAXAの活動や宇宙について解説している。

 「超1等地だもんさ」

 事業仕分け後は訪れる人がひきもきらない。ゴールデンウイーク期間は約1万8000人が利用したという。これは前年同期に比べ3倍以上の入り込みで、さほど広くない会場がごった返したことは想像に難くない。
 いまも「ニュースで知って興味がわいた」「1度見ておきたかった」という人が多い。
 野口さん、山崎さんと2人の日本人宇宙飛行士が国際宇宙センターで活動する(写真4)という歴史的快挙で、宇宙に関心が高まっていたことも背景にあろう。

 振り返ると、4月の事業仕分けは独立行政法人を対象とした第2弾(前半)で、宇宙航空研究開発機構の理事長が「宇宙に興味のない人がふらっと立ち寄れる施設にこだわりたい」とアピールしたが、都会の超1等地にあって年間1億円近い経費に見合うのかと仕分け人が首をかしげた。

 ちなみにJAXAiの昨年度の来館者は17万8000人、年間運営費9600万円。お台場に宇宙がテーマの類似した日本科学未来館があり、それとの統合や宇宙航空研究開発機構がつくば市で運営する筑波宇宙センターの利用、あるいはPRを求めた上での「廃止」だった。
 20日から後半の仕分けが始まった。蓮舫議員ら仕分け人には粛々と“仕事”をしてもらいたい。JAXAiのように一時的に注目を集めても判定に異論はない。これからも大なたを振るって欲しいし、期待もしている。

 「わくわくするじゃ」

21日朝に金星探査機「あかつき」の打ち上げが成功、JAXAiでは早朝からライブ中継を行った。 「あかつき」は日本の惑星探査計画で火星(火星探査機は「のぞみ」)に続いて、金星の大気の謎に迫る。

金星は大きさや太陽からの距離が地球に近いことから「地球の兄弟星」といわれてきた。だが実際は高温の二酸化炭素に包まれ、硫酸の雲が浮かぶなど地球とは全く異なる環境であることが知られている。地表をスーパーローテーション(超回転の意)と呼ぶ毎秒100bに達する暴風が吹き荒れる。自転速度の60倍に及ぶこの暴風の発生原因が現代の気象学では説明がつかず、金星最大の謎とされている。

 ところで小惑星探査機「はやぶさ」が6月に地球に帰還する。館内で「はやぶさ」の模型を撮った(写真5)。日本時間6月13日午後11時ごろオーストラリアのウーメラ地方に着陸する計画で、帰還のためのカウントダウンが始まっている。

 「はやぶさ」のミッションは惑星のサンプルを持ち帰ることで、世界初のサンプルリターン技術の確立、実証を目指して2003年5月に打ち上げられた。イオンエンジンを連続燃焼させ、打ち上げから2年4カ月後に地球からおおよそ3億`離れた彼方に浮かぶ小惑星「イトカワ」の上空に到達、いびつな形状や地形、鉱物組成、反射率、質量、重力など観察した。

 タイムリーな情報が得られるのもふらっと立ち寄った結果か。「イトカワ」の模型(写真6)を撮ったが、実際の長さは500 b余りに過ぎない極小惑星。地表のサンプルを積んでいて解明が楽しみだ。

 「JAXAiでコンパ二オンさいづで廃止になるんだって聞いだ。『全くわかりません』って。何聞いでも同じ答えなので『ひょっとしたら明日かもしれないんだ』と言っても同じでまいねがったじゃ。帰って編集長のS女史さ話すと『それっていじめですよ』だって。真実知りたがっただけだのさ。許してけろ」
             

万年青年Y

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