東京雑感   魔法の時間に立ぢ会ったんだ 2009.12.14

「ロマンチックさね」


 東京タワーは通常午前0時に消灯する。これは未明に撮影したものではない
(写真1)。「クリスマス・ライトダウンストーリー」というイベントで撮ったもので、東京タワーにまつわる恋伝説があって人気スポットになっている。
 冬場は暖色系のオレンジ色のライティングが施されている
(写真2)。消灯時間は午後7時30分。魔法の時間の始まりだ。クリスマスソングが流れる中、タワー周辺は暗くなって鉄塔の存在を示す赤色の点滅ライトと上下するエレベーターの灯りが闇に光る。
 地上とタワーをつなぐ複数のフラッシュライトが点滅し、地上150bの大展望台にピンクのハートマークが浮き出る
(写真3)。胸を躍らせてカップルが見入っている。 

 
「伝説の由来は漫画?」

 東京タワーの恋伝説、それは「東京タワーの照明が消える瞬間を見たカップルは結ばれる」「永遠に幸せになれる」というもの。
 由来は定かではないが、有力とされるのが弘兼憲史の漫画「課長島耕作」に出てくる一場面。
 恋人の誕生日にケーキのろうそくが1本少ないことに気づいた主人公が、ホテルの窓から見える東京タワーをろうそくに見立てて、午前0時ちょうどに吹き消させる心憎い演出をするのだ。
 それかどうか分からないが、恋伝説がいつのころからか若者らに浸透し、半ば都市伝説と化したのだろう。10年以上、もっと前かもしれないが、午前0時の消灯時間にいつの間にかタワー下にカップルが集うようになった。

「カップルでも寒いべ」

 東京タワーの「クリスマス・ライトダウンストーリー」は2005年に始まった。恋伝説に基づいて企画されたもので、今冬は2年ぶりに復活した。期間は12月1日から25日まで連日、午後7時半から30分にわたって光と音のページェントが繰り広げられている。
 タワー下からの撮影だったが、この夜は寒風が吹いて、雪国育ちで寒さに強いとはいえ10分もすると底冷えがしてきた。
 最寄り駅の赤羽橋から歩くと急坂を登るので分かるが、タワーは高台の途中に位置して、周囲に高い建物がないために風が鉄塔にまとわりつくように吹きすさぶ。
 この夜は常時100 人以上いて、中年カップルや家連れ、女性同士の姿も見られたが、恋伝説にあやかろうという若いカップルが圧倒的に多かった
(写真4)

 年頃の娘をもつ身としては複雑で、その場にいるのはしのびないが、取材と割り切ると落ち着くもので30分にわたる光と音のショーを楽しめた
(写真5)
タワー入り口には高さ15bのクリスマスツリーがきらびやかに輝いていた
(写真6)

「東京も厳しぐなったじゃ」
 
 デフレ不況下であっても、師走の街はイルミネーションがきらびやかで華やか。銀座、赤坂、六本木…。相変わらず人であふれているが、決して景気がよいわけではない。

 松屋や三越をはじめ世界のブランド店が軒を連ねる銀座の中央通りは東南アジア系の旅行者が目立つ。中でも羽振りがいいのは中国人。老舗や一流店には上得意の客であろう。
 経済大国として台頭する中国、インド。グローバル経済の縮図を垣間見た思いで愕然とする。が、それも首都東京であり、世界に冠たる銀座だからこそであろう。
 銀座、新橋界わいでは昼食時をはじめ、夜1杯ひっかけるにしてもリーズナブルな店がサラリーマンらで繁盛している。

「今年も残り少なぐなった。身の丈さ合った生ぎ方をしないと。まみしいばいいんだ」



                                                    
万年青年Y


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