東京雑感   お宝がいっぱいだばって 2009.4.21


 「国際色豊かなんだじゃ」

 ここはJR有楽町駅そばにある東京国際フォーラム地上広場。大江戸骨董市が開かれている(写真1)。19日だったが、晴天だったことで多くの人でごった返した。


 大江戸骨董市は6年前、江戸開府400年の節目の年に始まった。毎月第1、第3日曜に開催(雨天中止)している。当初は古物商、骨董業者の店が200店前後だったものの、現在は250店を超え、終日5万人が集まる一大イベントに成長。

 江戸から東京。主催者によれば、歴史や文化を振り返る中で、時代時代の匠たちが残した技をこの市で見いだすことができるというのだ。
 それにしても、近代的な巨大建造物(東京国際フォーラム)の狭間にあって風情を醸す露店市。フリーマーケットのようであり、外国人も多く国際色豊か。骨董ファンと店側の丁々発止としたやりとり、商談風景が面白い。

 「これが何でもあるんだ」


 外人男性が刀剣のつばに興味を示して値段を尋ねている。何種類かある中で、気に入ったつばを見つけたのだ。店の女性が片言の英語で紙に値段を書いた。12万円。同様のを銀座界わいの骨董店で買うと23万円だと説明している(写真2)。外人は買わずに礼を言って立ち去った。
 それにしても、一言で骨董品といっても多種多様、それは驚くほど。(写真3、4、5)

 古着や帯、ガラス工芸、陶磁器(陶器)、装飾品、万年筆、時計、ライター、盆などの塗り物、ブロマイド、ミニチュア、ブリキのおもちゃ類、人形。
 まだまだ書き足りない。絵画、日本画、巻物、衝立、仏像をはじめ能面、置物などの彫刻品、錠前、かんざし、くし、燭台、時代箪笥、茶箪笥、文鎮、キセル、パイプ、歴史本、絵図、刀剣、鎧。まだいこう。ボタン類、足踏みミシン、硯(すずり)、筆。

 大工が木材に直線を引くときに使う墨壺も人気が高い。凝った彫刻が施され美術品のよう。ただ木製品なので古いものほど保存状態が気になる。
 案の定、木彫の名残はあっても原形がよく分からない墨壺が2、3千円で売られている。手にとって老夫婦が相談していた。
 すべて見られなかったが、鉄道ものとかのマニアックなものが多い。

「価値が分からないんだ」

 価格帯は数100円から中には60万円と値の張るものも。価値観が分からない自分にはがらくた(失礼!)であっても、マニアには垂涎ものの逸品なのだろうか。
 骨董品にある程度の相場があるにしろ、素人にはそれが適正価格なのか全くもって分からない。何しろ目利きができない。論外だろうね。
古美術を扱っている業者が言った。「出来の悪い品ははじかれる。値段じゃないんですよ」。価値が分かる人、マニアと売り買いするということか。
 とはいっても、業者の言い値で買うのは馬鹿らしい。業者の胸算用には仕入れ価格があるが、売れなければ食っていけないだろうから。値段交渉ができる業者がお勧めだ。


「富岡八幡宮もいいや」

 他社の親しい支社長に門前仲町の富岡八幡宮に連れて行ってもらったことがある。そこは境内にびっしりと露店が並び、骨董ファンの間では人気のスポット。
 彼は骨董品に詳しく、水瓶を5個持っている。井戸水を汲んで溜め込むあの水瓶のことで、古民家で見掛けたりもする。ただ小さいものではないし、五個も必要なのか素人にはその辺が理解できない。水瓶は奥さんに内緒で友人に預けているとか。陶器に造詣が深く、時計を何個も持っていて玄人はだしだ。
 富岡八幡宮で彼が知り合いの業者から掘り出し物を見せてもらった後、境内を一巡して戻ったら雨がぱらついてきた。本降りになりそうで、帰り支度を急いでいた業者が値段を下げるから彼に買わないかと。壺だったか記憶が薄れたが、彼はよいものであることは認めながら買わなかった。尋ねたら特段欲しいと思わなかったとか。
 「投機目的で買ったらだめです。絶対に失敗します。掘り出し物のお宝なんてそうあるものじゃないし、気に入ったものを小遣いの範囲で買って楽しむのがいいんです」。テレビのお宝鑑定団を思い浮かべていた自分に彼が言った。

 「なかなかに奥深いんだ」
 壺や絵皿なんかも自分は完全無欠の状態がいいと思うが、欠けたり割れたりした部分を金繕いといって、金できちんと補修すると価値がそんなに損なわれないとか。
 骨董品もなかなかに奥深い。彼のアドバイス通り愛用したり、鑑賞して楽しむのでなければそれこそ宝のもちぐされだ。
 「楽しむ」。そんな視点でもう再度会場を回った。アンティーク、レトロ趣味。みなそれぞれ好みのジャンル、目当てのものがあるようで、手にとって年代や産地を業者に尋ねるなど喜々としてして品定めをしている様子が見えてきた(写真6)
 これまた外人が何本もの軸物を開帳して絵を見定めていたかと思えば、若いカップルが茶箪笥の引き出しを開け閉めしていた。
 「衝動買いはまいねな。うけうりだばって、骨董品は使って楽しんで、飾って雰囲気を楽しむもんだはんで」
      
万年青年Y





※ なお、次回の大江戸骨董市は5月17日開催。3日は音楽祭のため休みなので
ご注意を 
               

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