東京雑感   デジタル新時代が来るべさ 2009.3.5
               
「現場は意外に静かだ」

写真1
 ここは墨田区押上にある東京スカイツリーの建設現場。東武鉄道本社の屋上から撮影したもので、基礎工事と並行してエレベーターシャフトの立ち上げが行われている(写真1
 ちまたで話題の地上デジタル放送用の電波塔として注目される東京スカイツリー。高さ610bはタワーでは世界一で、昨年7月に着工して2011年暮れの竣工、翌12年春の開業を目指している。完成とともに地上デジタル放送の送信高は現在の約2倍になる。

 最寄り駅は東武伊勢崎線の業平(なりひら)橋。
周辺は下町の風情をとどめる地域。住宅街でもある。
隅田川を挟んで浅草とは目と鼻の先にあり、周辺に配慮し、杭工事なども最先端の掘削機材を導入して低振動、低騒音で作業が進められている。

 自分が訪れたのは2月下旬。タワー中枢のエレベーターシャフトが20bほど立ち上がっていた。建物6階ほどの高さで、春からはタワー本体の鉄骨建方工事が始まる。
 工事は急ピッチで進んでおり、ひと月も経つと現場の様子は一変する。エレベーターシャフトは秋ごろには200bに達するらしい。

「かなりスリムだべさ」
写真2

 タワーの足元は正三角形で一辺の長さが70b。規模を想像できるだろうか。東京タワーが一辺70bの正方形。三角形にすることにより景観に配慮し、周辺への圧迫感を軽減する狙いがあるようだ。
 東京タワーと比較して底部の面積が小さい上、かつ高さが 1.8倍だから、かなりスリムな外観になる。

 興味深いのは足元の断面が正三角形なのに上部は円形になること。シャープなそりと柔らかな曲線により、中間のそれは三角おむすびのように徐々に丸みを帯び、上に伸びるに従って円形になる。模型が分かりやすい(写真2)

 地上350bまでの第1展望台まで40人乗りのエレベーターが4基、そこから100 b上の第2展望台まで同規模のエレベーター2基が設置される。第1展望台はレストランやカフェ、ショップが併設され、第2展望台はガラス張りの空中回廊となる。

「関東を一望でぎるんだ」
 回廊からは関東一円が見渡せる。何せ地上450bからの眺望。視界さえよければ75`先まで見通せる計算で、北は栃木、南の方は千葉の館山から東京湾、神奈川の小田原まで見える。まさに空中を歩く気分になれるだろう。

【東武鉄道株式会社・東武タワースカイツリー
株式会社提供】

 最新技術の粋を集めたタワー建設。基礎ともいうべきタワー3本の足元に配置する連続地中壁杭は、地下35bより下の強固な洪積砂礫層を支持層に厚さ約1.2b、深さ50bの節付鉄骨鉄筋コンクリートの壁で、鉄骨籠にH形の鉄骨を入れて補強している。

 建設技術は日進月歩。ついでながら中国の広州タワーが609b、建物で世界最高となるブルジュ・ドバイは尖塔を含めて818bという超々高層ビル。いずれも建設中だが、限りなく天空を目指そうという人類の夢は果てしない。

 摩天楼といえばニューヨークを思う。
都内では東京都庁、六本木ヒルズ、東京ミッドタウンが突出する。50年後か100年後かは分からないが、近未来の国際都市TOKYOは超高層ビル群で天を仰げないくらいに変貌を遂げているかもしれない。裏付けは潤沢な資金に時代の先端をゆく建設技術だ。

「地の利もあるんだじゃ」
 3年後だが、開業のインパクトはとてつもなく大きい。新宿・渋谷、六本木方面に集う人を北東方向に引き寄せ、かつ新たなる集客効果が期待できる。
 計画ではタワー街区が形成される。タワーの足元に5階建てのタワーベイが建設されショッピングゾーンに。そこには地上32階地下4階の高層ビルが併設され、商業スペースをはじめ美術館、宿泊施設、スクール、オフィス、展望レストランなどが張り付く。

 立地条件として国際空港からの利便性がよいことが重要なポイントだった。羽田からは京急本線から都営浅草線の乗り継ぎで、また成田からは京成押上線で直通。タワーベイに押上駅地上出入り口が設けられ、京成押上線、都営浅草線のほかに東京メトロ半蔵門線、東武伊勢崎線が乗り入れる。
 地元の墨田区はタワー建設を起爆剤とした観光振興プランを策定、ビジョンを練ってもいる。

【東武鉄道株式会社・東武タワー
スカイツリー株式会社 提供】
 浅草が近いことも見逃せない。浅草の観光客の入り込みは年間4000万人ともいわれる。今年は正月三が日に210万人の人出があり、1日平均10万人は下らない都内でも有数の観光地なのだから相乗効果が見込める。
 年間2000万人から2500万人の入場者がある東京ディズニーランドとのパックツアーも現実味を帯びてこよう。
 
 事業主体の東武タワースカイツリー株式会社では、初年度の展望台の利用者を540万人と試算している。もっとも展望台のキャパがあって、営業時間内に計6台のエレベーターをフル稼働させても年間700万人が限度らしいから、土日祭日はかなりの時間待ちが予想される。

 先ごろ、鉄塔の色が公表された。限りなく白に近いブルーで、日本の伝統色である藍白(あいじろ)だそうだ。青空に映え、春は春でそばを流れる北十間川沿いの桜とマッチしよう。

「ゴジラ復活するべが」 
 以下は他愛のない会話で、悪意はないので目くじらを立てないでいただきたい。
 東京雑感をアップしてくれる陰の編集長・S女史の住まいが建設現場から近いらしく、彼女いわく。「仮にゴジラが東京スカイツリーを倒せば、わいのマンションつぶれるんず」。ゴジラ好きな自分は小躍りして応じた。
「そんだ。ゴジラは新しいもの好きだはんで復活すれば当然、東京スカイツリーさ現れるべさ」
      
万年青年Y
 

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