「興味が尽ぎなくてさ」
東京メトロ副都心線の開業(14日開業)に伴い、新渋谷駅構内を歩いた。2日連続で(写真はすべて16日撮影)。
時代を代表するような技術の粋を集めた建造物、先駆けともいえる先鋭的なモノに興味を惹かれる。
目当ては「地宙船」。建築家の安藤忠雄氏が手掛けた新駅のデザインコンセプトで、地中に浮遊する宇宙船のイメージとか。
15日だったが、日曜とあってホームは混雑していた。宇宙船を思い描いていた自分は一刻も早く見たくて気がはやった
「海外にも誇れるんだ」
資料によると、地宙船は長さ80b、幅24b、高さ12b。楕円形の巨大空間が乗降客を待ち受ける。
自然の力による換気システム。これが地中の宇宙船の正体。さらに天井や床にチューブやマットを敷設して冷水を循環させる放射冷房を採用。クーラーを使わず、通常の地下駅に比べ、エネルギー量に換算して年間1000dのCO2
削減になると報じられてもいる。
洞爺湖サミットが来月に迫っている。主要テーマの環境問題では、温室効果ガスの削減が最大の関心事であり、2013年以降の「ポスト京都議定書」でどのような国際的ルールがつくられるのか、議長国の責任は重い。
そんな中にあって、12日のプレビューで石原東京都知事が「実に面白い。東京オリンピック招致の宣伝にもなる」と新駅の感想を述べてご満悦だった。
環境負荷低減効果はかなりのものだろう。
「暑くなぐ快適なんだ」
渋谷の副都心線ホームは地下5階にある。ホームから改札階の地下3階までの3層の吹き抜けに目を見張る。それが地宙船のコア。(写真1)
地下1階までの高さが約20b。電車の排熱がこの吹き抜けをつたって上昇、外部に排出される。と同時に外気を取り込んで駅構内の温度上昇を抑制する。エスカレーターと階段を上り下りして、空気が流れるイメージを目で追った。何となく理解できる。
16日の都内は27度近くまで気温が上がったが、設計の狙い通りなのだろう。構内は暑くもなく快適。盛夏でも放射冷房で構内温度を29度に保つというから素晴らしい。
「オタクでないばって」
自分はカメラ小僧のように心を躍らせながら、ここぞという場所でシャッターを切った。だが地宙船のイメージがつかめない。駅の案内係に尋ねたら、改札からホームに至るアール状の覆い(アーチ)がその一部とか。材質はガラス繊維補強コンクリート(GRC)。(写真2)
考えてみると地下3〜5階にまたがる地宙船の外観を撮れるはずもない。わかりづらいので構内に張り出されていたイラストを撮った。(写真3)
構内は建材から発するにおいで、新装らしい雰囲気がプンプンと漂う。定期券の発売所は円形スペースに収まっていてモダンな感じ(写真4)。ここで定期を買いたいと思ったほど。
あまりの目新しさに足取りも軽やか。あちらこちらでカメラを手する人やケータイで撮影する人がいて、端からは自分も鉄道マニアかオタクに見られたかもしれない。
「北参道に行ったじゃ」
改めて改札口からエスカレーターに乗ったら、宇宙船の内部に入る感じがしてなかなかいい。
10000 系の最新車両を導入したことで、ホームにも何人かのカメラを持ったマニアの姿が。渋谷は発着駅なのに、ホームが2本あってどちらも池袋方面行き。急行と各駅があって迷っていたら、駅員が「池袋に行くなら急行がいいですよ。出発時間が遅くても途中駅で各駅を追い越しますから」と言う。
行く当てもなく、いったん急行電車の座席に陣取ったものの、新設駅の北参道駅を見たくなって各駅に乗り換えた。
「茶というより褐色だな」
路線カラーはブラウン。(写真5)
池袋と新宿、渋谷の3大副都心を縦断することからついたネーミング。開通とともに百貨店戦争が激しくなり、エリア間競争は今後ともし烈を極めそう。
人混みをきらって北参道にしたのだが、駅前の明治通りは電気設備の新設工事中で、およそ駅らしくない。工事と併せて歩道を拡幅するようで、目立った店舗もなくて発展する余地があるように思える。
今度は北参道から新宿3丁目駅に。こちらは他線との連絡があるだけに構内は利用客でごった返していた。県人会でお世話になっているノアノア(ライブハウス)に近い出入り口ができたそうだ。
それにしてもノアノアからの帰りはいつも迷って、最寄り駅の道順がいまだに分からない。気がついたら深夜、新宿界隈で千鳥足の自分がいる。ちょっと悲惨だった。
「ノアノアの関さん、お世話になっています。副都心線でぎたし、今度行ぐはんで」
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