東京雑感   ゴルフは面白いじゃ 2007.11.30


 「やらねばまいねべ」
 昔はまだしも、近年の歴代東京支社長は例外なくゴルフをやった。東京で始めた先輩もいて、自分にすれば東京支社勤務イコールゴルフというイメージで、ゴルフをやらないと仕事にならないと思い込んでいた。
 前任者はその前の仙台支社時代に始めている。キャリアは3、4年だが、センスがいいから腕前も確かで、東京支社に異動が決まった昨年3月、住まい探しで上京した時に言われた。
 「ゴルフはカネがかかるから強制はできないけど、広告代理店や支社長会などの付き合いもあるから、どちらかと言うなら、やらないよりはやった方がいいと思う」
 微妙な言い回しながら優しい気遣いに感謝をしたし、有り難いアドバイスだった。
 案の定、引き継ぎの際に銀座で会った某支社長からいの一番に聞かれたのは「ゴルフやるんでしょ」だったし、あいさつ回りで尋ねた某広告代理店の社長は弊社の歴代支社長を知っており「秋葉原界わいで安い中古用品を売っているから。10回のリボ払いなら月々いくらでもないよ」とにべもない。
 
 「二次会行ぎたかったさ」
 自分はゴルフをやるのが念願だった。前任地の黒石支社時代に妻にゴルフを始めると打ち明けたら、考え直すよう懇願された。
 それはそうだ。黒石市は飲みの会合が多く、極端に言えば飲まないと付き合いが広がらない、そんな土地柄。二次会、三次会と行くと弘南鉄道の最終に間に合わず、よされ横丁がいくら安いといっても、深夜に弘前市の自宅まで何度もタクシーで帰っては月々の小遣いがあっという間に底をついた。
 その上にゴルフ? 反対されるのももっともだった。

 「うれしいことばかりだじゃ」
写真1
 でも職場が変わると話は別。何せ東京支社ではゴルフをやらないと仕事にならないのだから。思い込みもあるが、反対される筋合いがない。
 ゴルフを始めると決めてからはうれしいことが多かった。
 ゴルフバッグは新品のを県人会の人からもらった。「優勝賞品でもらって物置にあるだけだから。自分のはいいやつがあって、使わないんだ」。昨年の8月初めだったが、わざわざ車で支社まで届けてくれた。
 クラブは自分でセレクトした。シャフトが柔らかい「R」が初心者にはいいと某社長から聞いていたのに、ドライバー、ウッドは「R」でも、アイアンはメーカーが気に入って固い「S」を買った。
 最低限のクラブを買いそろえ、社長に報告したら「なんでそういうめちゃくやな買い方をするんだ」とお叱りを受けた。
 若い時分に凝ったスキーで、セット用品では物足りずに板や金具、靴、ストックなどメーカーに関係なく自分の好みで買いそろえた感覚だったが、ゴルフはタブーなのだろう。素人だからしようがない。でも社長はそれまで親身にアドバイスをくれたし、怒りに愛情を感じたものだった。
 社長からはその後もレッスンプロの指導を仰ぐのが上達の早道と教えてもらったのに、自己流で始めてしまってあきれられたのだが、今も気さくに相談に乗ってくれる。
 
 「スコアは聞がないで」
 ゴルフを始めて人の有り難み、人の優しさにふれることが多かったこの1年数カ月。
 再三にわたって東京でのゴルフの必要性を説き誘ってくれた某支社長。用具をそろえる前で、クラブがないと言ったら己のセカンド用品を貸してまで指導してくれた別の支社長。初めてゴルフコースに出たのが昨年の7月末。その時のラウンドが楽しかったからこそ今日がある。
 それでどこまで上達したかって? 分かるでしょ。ここまで行数を引き延ばしてきたんだもの。
 支社長会の皆さんは優しくて、一緒にラウンドした方々からは「うまいよ」「うまくなるよ」と慰めの言葉をよくもらった。
 でも外交辞令で、言葉の前に「初心者にしては」とか「練習すればもっと」とかいった注釈がつくのだろう。スコアが荒れたコンペはフォームアドバイスをしてくれて、人の優しさが身にしみるのもゴルフをやったからこそ。ゴルフはまさに紳士のスポーツだ。

 「昔は左で練習したんだ」
 以前、テレビCMか何かで「ゴ
写真2
ルフは地球を相手にするスポーツです」とかいったキャッチコピーがあったが、自分はまさにこれ。空振りならまだしも、アイアンで芝を大きく削ぎ、ボールも飛ばない。いまだにコースと格闘することが多く、自己嫌悪に陥りながらも、地球環境に優しくありたいと切に願っている。
 20数年前のこと。自分は野球で左右両打ちができるから、弘前市郊外のゴルフ練習場で左打席で打っていたら、極端なスライスで打球が次々と左端のネットを越えていった。
 弘前警察署刑事1課の猛者連も練習していて、その中の1人から「こらっヤギ、球なぐなってしまうべな」と叫ばれた。赤面した。
 「懐かしいじゃ。あのころに戻って一緒にコース回るべ。今は右打ちでまだ下手だけど、飛距離では負けても勝負ではなから負げるつもりないんだばって。もちろんハンディあってのことだけど…」。                                  
万年青年Y
 
写真1、苦楽を共にしてきた己のゴルフ用品。バッグはいただき物
写真2、全部ではないが、惨たんたる内容のスコアカード。随分とやったんだ

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