東京雑感   誓いを立てたんだ 2007.4.23

「禁煙って難しいな」
  東京支社勤務も2年目に入った。都内の桜も終わり、津軽は春らんまんの季節を迎えている。だが思えば昨年は着任したばかりで桜を愛でる余裕なんてなかった。
 東京に異動が決まって幾つか誓いを立てた。快適な単身生活を送れるよう特に気を使ったのが食事。買い弁当を避けて自炊をしようと決めた。
 若くないので無理は利かないし、体調を崩しては仕事にも支障を来すので、食材を吟味して自分で料理を作ろうと考えた。
 そういえば禁煙も誓ったが、半年で挫折した。都内では吸いたい時に吸えない、それが精神衛生的によくないという悲壮(?)なまでの決意だったのだが・・・。

 「デパ地下さ行ったよ」
 最初が肝心ということで着任当時は張り切っていた。引っ越した日にいきなり渋谷のデパ地下に出掛けた。
 人だかりの中で無性にカレーが食いたくなり、肉やニンジン、玉ネギ、ジャガイモ、牛乳、卵その他を買ったのはいいが、レジで食材がカウントされるたびにOLら周りの女性から好奇の視線を浴びた。
近くのスーパー。
「野菜の鮮度がよくて気に入ってるんだ」

 自分の住まいは渋谷の次の駅で、しかも駅から2分足らずの所なので、周辺を探索していなかった。住まいから東西に足を伸ばせば双方5、6分の所にスーパーがあったのに。夕暮れ時で駅周辺が混雑していて、人の流れに逆らって地下鉄のホームに吸い込まれるように階段を下りて行ったのだ。

 「性格は変わらねもんだ」
 デパ地下のレジで居合わせたOLたちには、渋谷駅周辺の高級マンションに住まいしている転勤族とでも映ったろうか。
 唐突に突っ走る欠点がここでも発揮された。帰りの地下鉄は勤め帰りのサラリーマンらで混雑。ひと駅とはいえ、買い物袋を2つ抱えて難儀した。
 情緒のある下町より利便性を優先して都会的な場所を選んだのに、何というミスマッチ。デパ地下に出掛けたのはしようがないとして、そこでは味の名店などで出来合いのおかずや総菜など最低限の食料を買うだけで良かった。昔からそうだが、やることがスマートさに欠け、意外に不器用だ。

 「カレー好きだじゃ」
 料理のレパートリーは確実に広がった。でもよそ様には決して自慢はできない。
 牛肉と豆腐、長ネギのすき焼き、肉とジャガイモ、ネギだけの豚汁、野菜の傷みが気になった時にはポークに焼き肉のたれ付けの千切りキャベツあえ、レタスのみそ汁、大量のモヤシ炒めなど、その都度ありあわせで作る“独創料理”は、自分であきれながらも枚挙にいとまがない。
 この前もカレーを作った。昨年の6月だったか。鍋いっぱいにカレーを作って、カレーをシチュー代わりにパン食にしたり、カレーうどん、それでも余って弁当箱に詰めて支社に持ち込んだ。数日間カレーざんまいだった苦い経験から、ルーを買いだめしないことにしていた。それでその時できたのはスープカレーだった。水が多かったのか、ルーが足りなかったのか…。

 「まさに天の声だべ」
 自炊では栄養が偏りるので、外食もいいと思い直して近所の中華店で野菜炒めを頼んだ。肉が入っていなかった。肉を食いたい
今夜は焼き肉だけど
「焼きすぎだがも…」

と思えば50円高い肉入り野菜炒めを注文すればよかったのだ。都会は本当に分かりやすい。
そこまで自炊にこだわるのも、前任地でお世話になったS社長のアドバイスに納得がいったからだ。
自炊を続けるコツとして
@食後すぐに食器を洗う
A食器は何枚も使わない、大皿1枚におかずを盛りつけられば理想
B冷蔵庫を空にしておかない―と伝授された。
また「みそ汁は必ず作る。具は何でもいいから、沸騰した湯にみそをぶち込めばいい」とも言われた。天の声のようで有り難かった。
 自炊をしていると明かせば「マメだ」とのお褒めの言葉をいただくが、そうでない。キッチンドリンカーというか、アルコールを飲みながら作るので大儀でないのだ。酒飲みの証しなんだろう。
 
 「捨てれないんだ」
 学生時代にひもじさを体験したせいで、冷蔵庫に常に食品が入っていないと落ち着かない。卵と牛乳は欠かさず入っている。
だが、県人会関係など宴席が続いて、帰って寝るだけの日がなくもない。冷蔵庫から賞味期限が迫った食材が出てくると、もったいなくてありあわせの料理を作ってしまう。だが最近はそれもいいと思えるようになった。
 頓挫した禁煙の誓いはまた再挑戦(黒石支社時代を含めれば再々々挑戦)したいと思う。「2年目。飛躍の年にしたいんだばって」。
    
万年青年Y
 

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