東京雑感   芸術で頭は爆発寸前 2006.9.22

 「文化部記者になれるべか」
 県人会関係の会合が一段落し、最近は美術展を取材する機会が多くなっている。
 自分は硬派か軟派のどちらかといえば軟派で社会部肌。サツ(警察)回りの時代から徹底した現場主義で、いいのか悪いのか分からないが、野次馬根性は人一倍で好奇心が旺盛。
 半面、文化的な素養に乏しく、文学や芸術は大の苦手。
県出身者の絵画展や美術展の取材があるのは承知していたが、画廊や美術館を訪ねる機会が多いのには驚いた。ひるがえればそれは多くの県出身作家が首都圏で活躍していることの証しであり、喜ぶべきことなのだが…。

 「美人に弱くて」
 会場で主宰(主催)者に名刺を渡し「わざわざ支社長さんに来ていただいて…」と恐縮や感激をされては、「絵は苦手でして」などとは口が裂けても言えない。正直、どうやって記事をまとめようか思案なげ首で、平静を装うように努めている。
 それでも丁寧に教えてもらい、何とか記事にしている。
取材後に「目立つように載せてください」と女流作家から言われようものなら、自分でも不思議なくらい張り切る。美人ならなおのことで「これも記者の性(さが)だべか?」。
 そんな時は行数が長くなりがちで、書いてから字数を減らすのに躍起になる。己の文章に酔ったりなんかして簡単に削れないときはパソコンにかじりつき、頭に血が上っていくのが分かる。

 「半年になるんだな」
 早いもので、東京に来てから10月で半年になる。だが慣れたころが危ない。
前に妻に言われたことがある。
「あんたって、しっかりしているようだけど時々ボケ入るよね」。
 前任地の黒石支社時代は、物忘れがひどくて支社のスタッフによく助けてもらった。妻の話をA女史に明かしたら合点がいったのか、手をたたいて大笑いされたことも。
 それはそうと、これまで上野公園の東京都美術館に何回足を運んだろう。支社からは地下鉄銀座線に乗るが、目をつむっても行けると油断したころに失敗が。


 「ボケって消えねんだ」
 なぜか終点の浅草が上野だと思い込み、浅草駅構内で上野公園口を探したり、先日は上野とは反対の渋谷方面に乗った。残暑のせいにはしたくはないが、ボーとしていたようだ。
 歩きたくないし、浅草行きのホームが隣り合わせの駅まで


行きたかったが、時間がもったいないので2駅目の虎ノ門で乗り換えた。
それなのに
都美術館に着いたら休館の看板
鉄の格子門がいかにも重々しく、やる気をそぐようにそびえているではないか。

 新制作展の取材で、会期中(9月18日〜10月3日)は19日のみ休館とか。
案内状を確認しない自分が悪いが、休館を知らないで訪れるファンも多く、見知らぬおばさんが「休館ですか。家が遠いのでしょっちゅう来れらなくて、きょうは病院の帰りに楽しみにして来たのに」と残念そうに話しかけてきた。
  
 「上野は懐かしな」
自分も口惜しいが、気持ちを切り替えて上野公園の“西郷どん”を訪ね、そばにいた女性に撮影をお願いしたり、アメ横をぶらついた。
 幼少の頃より、物が安いアメ横は東京で必見のスポットみたいな雰囲気があった。上野が東北の玄関口で、寝台列車が重宝がられていたころ。

 ♪上野はーおいらのー心の駅だー
 鼻歌交じりで口ずさんだら、急に足取りが軽くなった。
 
万年青年Y

 

「私はダリでしょう?」  だって












上野公園で見つけた「ダリ回顧展」の
巨大壁面装飾の前で


(9月23日〜2007年1月4日、上野の森美術館)

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