東京なりゆき通信 vol.6  大沢サプライズ 2015.7.30


 暑いです。本当に暑いです! 「東京の夏は…異常ですからね」と赴任当初から言われておりましたが、まさかこれほどとは。通勤でひと汗、昼飯でひと汗。でもって、少し動きやすくなる夕方からは銀座などでムキになって「水分補給」する毎日。そういうわけで心身ともに疲れ果てておりましたが、そんな中、なんと、憧れの作家・大沢在昌さんの新作本が手元に届きました。しかも「成田幸男様 大沢在昌」のサイン入り。いっぺんに疲れが吹き飛んでしまいました。

 「M社花の都支社」の才媛Sさんのおかげです。東京出張でSさんと会ったときに私が大沢ファンだったことを知り、弘前にいた頃に初めてサイン入りの本を送ってもらいました。何の前触れもなく会社に支社から荷物が届き、開けると大沢さんの新作。ページをめくると、今回と同じように私宛てのサインがあったのです。まさにサプライズ! あの感激は今も忘れません。

大沢在昌さんの新作「極悪専用」。
今回も存分に楽しめる内容です


 Sさんのご友人が六本木でバーを経営しており、大沢さんがそこの常連なのだとか。ご友人は来店した大沢さんにお願いしてサインをしていただいているとのことです。カウンターでスコッチのロックを飲みながら談笑する姿、サインを頼まれ快くペンを走らせる大沢さんの姿をあれこれ勝手に想像しては、本をいただいた感激に浸ったものです。

 すっかり忘れていましたが、東京に来てからは本当に本を読まなくなりました。いけませんね。一人暮らしだからそれなりに時間があるはずなのですが、本よりも、ついついテレビに見入ってしまいます。地デジはチャンネルが多いし、WOWOWの海外ドラマも見なきゃいけないし。大抵は録画しているのですが、その録画を消化鑑賞するだけでも時間が足りないという感じです。
 本当いけませんね。これまであまり見なかったバラエティー番組も見るようになり、この前はテレビを見て独り言を言って笑っている自分に気付き、「やばいな」と思った次第です。
表紙をめくると大沢さんのサインが。
ありがたや、ありがたや



 本を買わなくなったのは、書店をぶらつく回数が減ったからだと思います。暑いからだとは言いませんが、若干は影響があるのかもしれませんね。それでも元来が本好き。先日は猛暑の中、有楽町の書店に出掛けました。そのときに大沢さんの「極悪専用」が出版されているのを知ったのですが、単行本を持ち帰るのが大儀になり、ついつい他の作家の文庫本を購入したのでした。
 それから数日しての今回のサプライズです。新作の「極悪専用」は大沢さん得意のブラックユーモア調の犯罪ストーリーです。「新宿鮫」シリーズや「佐久間公」シリーズの王道のハードボイルドではなく、どちらかというと「走らなあかん、夜明けまで」(こちらは極めて心地よい読後感のコメディータッチ)に通じる内容と言うべきでしょうか。チョイ悪の若者が裏社会に身を置かされ、さまざまな事件に巻き込まれていきます。久しぶりに大沢さんの本を手にし、この若者はどうなるのだろう、この女性たちは最後どうなるのだろうと、それこそ久しぶりにハラハラ、ドキドキしながら夢中で読み進みました。いつもながら、登場するキャラクターが実に魅力的なのです。さすがです。
 日本では普通ではあり得ない設定や事件。それが「大沢ワールド」では何の違和感もなく、いまそこで起きている事件に思えてしまう。これもさすがです。

 いつも思うのです。ページが少なくなると、「これでまた大沢作品とはしばしお別れか」と。現在も週刊誌に連載があるのですが、それはあえて読みません。出版されるのをひたすら待つのです。大沢さんの本を読める幸せ、新作を待つつらさ。それもこれもファンならではの楽しみです。

 大沢さんの本を読み終えて、やはり小説はいいなと思いました。テレビも映画もいいけど、やはり活字がいい。新聞人だからですかね。暑い東京でいい時間を過ごしているという気持ちになります。自己満足ですが。

 ただ、残念なことが。大沢さんをはじめとするそうそうたるメンバーが集うイベントのチケットが、これまたSさんのご友人から「あるよ」と連絡が来たそうです。しかし、当日、私は軽井沢に出張。それを出張から帰ってから聞きました。仕事だったので仕方ないですが、いやあ、本当に残念でした。

 残念と言えば、いつもサプライズをくださるSさんのご友人が経営する六本木のバーにまだ行けていません。大沢さんたちが常連ということは、私みたいな、しがないサラリーマンが行く場ではないのでしょうが、今度ぜひおじゃましてみたいと思っています。もしかしてばったりお会いしたりして。それも何か、畏れおおいことですが…。

 

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