東京なりゆき通信 vol.2  神宮デビュー 2015..4.21

 やって来ました、神宮球場。4月17日のナイター。そうこの日は私の55歳の誕生日。部屋で「1人ワイン」も情けないので、ヤクルトのホームゲームで「1人ナイター」と決め込み、いざ、出発。
 しかし、地下鉄外苑前駅は人であふれ、びっくり。「地上で大きな事故があったのか」「いや、ヤクルトの人気はそれだけすごいのだ」と勝手に思っていたら、実は外はスコールのような雨。しかも風が強い。傘を持たない乗客たちは駅から出るに出られず、出口に長い列を作っていたのでした。
 
 まさか、試合中止? 「やんぬるかな」。しかし、ここまで来て球場に行かないわけにはいきません。ゲリラ豪雨と言っていい春の嵐の中、途中で雨宿りしつつも少しずつ前進。ようやく球場にたどりつくと、開始は遅れたが、試合はやるとのことでした。筋金入りのヤクルトファンである大先輩に教えられた、「神宮じゃライトスタンドで応援するのが通なんだよ」との言葉を思い出し、窓口で迷わず「外野自由席1枚」。
 
 ちょっと無理をしても、この日を私の神宮デビューとしたのは相手が中畑DeNAだからです。巨人戦では観客が多過ぎる。阪神ファンは人数が少なくとも応援の盛り上がりがすごい。程よ
雄平のホームランで先制。東京音頭で盛り上がる神宮球場

い客の入りで、程よい盛り上がりが好きなのです。となれば、神宮で選ぶのは横浜か広島。中畑監督も見てみたかったし、この日の対戦はまさに私好みのカードなのでした。
 
 ただ、球場は超寒〜。ジャンパーは着てきたものの、時折、雨は降るし、風も強い。元気な会社員たちはそれでも結構ビールを注文していましたが、私はとてもとても。自販機で温かい飲み物を買って暖を取ってみましたが、それでも寒い!
 
 さて、試合。ヤクルト先発はエース小川。「早く点をとってくれ〜。1点あったら小川なら勝てる」。そう願ったものの5回まで両チームともゼロ行進。そこでふと、あることに気付いたのです。「あれ、小川って、きょうは1人もランナー出してないんじゃないの」。そう、小川はなんと完全試合ペース。まだ5回を終わったところですが、ここまででもヤクルト守備陣にはいくつかのファインプレーが出ておりました。記録達成は味方のファインプレーあってこそ。スタンドからは「これ、いけるんじゃないの」のざわめきが。ただ、ヤクルトも無得点。心優しいファンは小川にプレッシャーを与えないよう小さな声での「ざわざわ」なのでしたが、スタンドインタビューを受けた女性ファンが大型スクリーンに映り、「小川さ〜ん、完全試合、期待してま〜す!」。あ〜あ、言っちゃったよ。
 
 小川は6回もランナーを出さず、ますます快挙達成の期待が高まると、ヤクルトはその裏、4番雄平が技ありの流し打ちホームランで1点先制。スタンドはご存じ「踊り踊るな〜らちょいと東京音頭」で盛り上がり、しかも小川、山田が連続タイムリーを放ち、3得点。あとは小川の完全試合、悪くてもノーヒットノーランに注目が…。
 ですが、今季、調子がいい横浜はあなどれません。7回簡単に1死となりましたが、93球目でした。小川の直球がライト前に弾き返され、神宮は大きなため息に包まれたのです。でも、そう簡単にできるものではありません、完全試合は。「ひょっとしたら最高のバースデープレゼント?」と期待したのは確かですが、こんなことがあるから野球は面白いのです。
 
 快挙の記録が途絶えると、しばし、忘れていた寒さがまた襲ってきました。「ここでくじけてはヤクルトファンではない」と思いつつ、さすがに7回が終わると、耐えきれず、グラウンドに一礼して球場を後にしたのです。根性なしですみません。
 
 部屋に帰り、熱いシャワーを浴びても、なかなか体が温まりません。家族にメールすると「テレビで見てればよかったのに」。なんとまあ、神宮で見るからこそ楽しいのではないですか。
 
 さあ、あとはスポーツニュースを見て…と思っていたのですが、いつのまにか眠り込んでしまいました。でも、東京暮らし初の神宮観戦。勝っただけでも喜ばしいのに、この日の勝利でなんと、ヤクルトは3年ぶりに単独首位に立ったのでした。長いシーズン、ふけさめはあります。でも、首位を争う位置にいるというのは気分がいいですね。
 
そう言えば、野村ヤクルトは強かったなあ。「古田〜! 稲葉〜! 池山〜!高津〜!」。いい選手がそろっていましたからね。あ〜ぁ、あの頃が懐かしい。でも今のヤクルトも楽しみです。機会を見て、また神宮に行こうと思います。もちろん、天気のいい日に。
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