見事に５が縦に並んだ。まさにオール５、素晴らしい成績である。我ながらアッパレ！！遠い昔（小学校のころであったべがな？）こんな通信簿を見たような気がする。「うそしなであ」てさえるがもわがねばって、そんでもねんだおん。これでも、高校時代は全校トップで卒業したでしおん。９００人近い生徒のトップだ。たいしたもんだべ。

　実は、学業成績といっても、欠席とさぼりの不真面目な学業成績で一番だった。わの自慢のひとつで、けやぐの間では今も語り継がれている。「までまで、な、まだかくしていることあるべ？」と、背中の方からけやぐの声が聴こえた。分かりました。白状します。もう一つ全校トップの学業不成績がありました。

　よく授業料を滞納していました。親から頂いた８００円の授業料を使い込んでいた。お支払いが遅れるたびに、女子事務員の三上さんに頭を下げていました。よく呼ばれた職員室だけではなく、学校事務までその名が知られていたんですよ。そのお金は何に使ったがって、んー、五所川原で汽車を降りずに、そのままＳＬで黒地に黄色いラインが眩いセーラーの女学生と、弘前の映画館でホフマンの『卒業』を観に行ってました。艶めかしく伸びたミセス・ロビンソンの熟れた脚。徐々に脱げていくストッキングに目が点になったのが、つい昨日のことのようだ。

　学校さぼって見た映画が『卒業』でよかった。不真面目な学生も首尾よく『卒業』出来たのでした。
　自分で言うのもなんですが、別に目立とうとしたわけではないんです、やることなすこと人並みはずれの異端児で、スーパーエンジョイなキャンパスライフは目立っていたんですね。

　待てやおい。今日は学業自慢の不健康な話をしに来たわけではなかった。健康優良爺のことをすっかり忘れていた。

　１１月頃、仕事が忙しかったせいか少しのぼせ気味だったので、かかりつけの町医者に寄った。体温計を見たら６度三分だった。「平熱ですね」と、村治香織によく似た受付の中村さんの声も冷めていた。
　早まったかなと後悔しながら、「今日も抜かれるだろなぁ」と覚悟はしていたが案の定、山本先生から「念のため、血液検査をしておきましょう」と、常套句のお告げがあった。10年も付き合っていると大概の事は察しが付く。

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　それから一月後にもらったのが、この血液検査報告書だった。「こんにちは」の挨拶を終わるや否や山本先生から「米寿まで大丈夫だね」と、執行猶予27年の判決が言い渡された。これはいつもと違うぞ。「えっ？」と座り心地の悪い丸椅子から、体をかがめて先生の手元を覗いた。
　なんと、*印が真ん中の白い行に一列に並んでいるではないか。オール５だ。この年でこの成績は立派と先生からも褒められた。先生が可笑しなことを言った。「嘘つきだからね」と聞こえたので、「先生がですか？」と。別に検査結果を疑ったわけではない。素直に聞き直しただけだった。先生は政治が嘘つきで、医療費が上がる一方だから、病気にならないようにしないといけないと言いたかったのだ。先生はよく分かっていらっしゃる？と言いたかったが、注射で痛い目に遭うといけないのでこらえた。

　学業も健康もオール５をとるには、それなりに努力が必要だ。実は、今年の夏から２６年ぶりにカガアに弁当を作ってもらっている。弁当といっても、おにぎり一個と生野菜におひたしの低カロリー弁当だ。会社でも”ださいの草弁当”と評判だ。
　晩酌も週末だけにして、１０年近くなる。日頃、うまくない一人酒を我慢して、仲間との美味しい酒を飲むために「飲みしろ」を空けているのだ。良い生活習慣で「生活習慣病」ともお別れだ。良い習慣はオール５の基本である。
　ご同輩。テスト前の一夜漬けでは、オール５が無理であることは百も承知のはず。ださい治でも出来るんだから、俺が出来ない訳がないと、がんばってみては・・・。

　山本先生から検査報告書を受け取った後、受付で治療費は滞納せずに、しっかりと支払いを済ませ、受付事務の三上さん？　いや中村さんに「有難うございました。良いお年を」と、ご挨拶をして医院を後にした。