多田野 フー子
☆わたしはマギー
マギー、思い出の…あの味

                                                         
和食との出逢いは、たぶんアメリカの自宅。

父は料理ができる人なので、自分用におつまみになる和食を作っていたわ。
枝豆、鶏の照り焼き、かき揚げ、天ぷら、お寿司、餃子とか…。

わさびが無い時は、ホースラディッシュを代用して使ったりしてた。
ホースラディッシュは、ステーキ以外にも使うと、お料理が格段に美味しくなるわよ。

母はあまり料理が得意ではないので、作るのに時間がかかってしまうの。
クリスマスや感謝祭のディナーは、開始時間がいつも遅くなってたわ。


そんな時、父がこっそり作ってくれた小さいおむすび。
「さぁ、これを食べながら待とうか。お母さんが、一生懸命に
ディナーを作ってくれているからね。」
と、ウィンクしてくれた。

今もおむすびは大好き。
好きな具は梅干し。
大学へ持って行くのは、おむすびが多いかな。
あっ、それとスパムおむすびもよく持って行くわね。

父は、牡蠣の燻製なんかも作っていたわ。
中華鍋と桜のチップを使ってちょちょっとね。


それと子どもの頃、食パンにバターをぬってたくあんや漬物をのせて、
くるくる丸めて、ロールケーキみたいにして食べてた。
「きゅーりの○ちゃん」もはさんで食べてたわ。
母は不味いって言ってたけれど、美味しかったわよ。


日本に来てから覚えた和食?

友達の家で食べた、卵かけご飯かな。
炊きたてのご飯に生卵とお醤油、おいしかった。

日本では生で食べられる安全な卵が簡単に手に入るけれど、
海外では難しいから…。
アメリカでは、生の卵は食べる習慣がないのよね。
だから、卵かけご飯の存在は知らなかった。

納豆も食べるわよ。
ご飯と一緒に食べるし、納豆だけでも食べるわ。
でも、ご飯をかきこむのは行儀が悪いから、
外では食べないってわ、って友達が言ってた。

懐かしい料理?

父の手作りの塩辛かな。

イカの肝をとり出して墨袋を切り離した後で塩をふり冷蔵庫で
1、2時間休ませるの。

イカの肝から水分が出るので、丁寧にキッチンペーパーでふく。
ここがポイントね。
これをすると、格段に美味しくなるのよ。

肝の袋をやぶり、中身を削ぎ出し、包丁で細かく切り、塩を適量加える。
生のイカの皮をはぎ、身を細長く切り、ついでに足も切って、肝とあえる。
ライムの皮を薄く削ぎ、千切りにしてまぜる。

ライムを使うのがアメリカ風かな。
ライムはレモンにしてもいいし、柚子を入れるともっと美味しいわよ。

よく知ってるねって?

それはそうよ。
美味しいから、たまに作るの。

日本で暮らしている今は、スーパーに行くといつでも塩辛は買えるのにね。
父の優しさの味でもあるのかなぁ。


思い出したら家族に電話したくなったわ。


「日本は今、桜の季節です」って。