多田野 フー子
☆わたしはマギー
マギー、思い出の…おばあちゃん先生

                                                         
子どもの頃は、とにかく毎日が忙しかったわ。

月曜日から金曜日までは、アメリカの学校に通学して、土曜日は日本の学校に行っていたの。
算数や漢字のドリルの宿題もあって覚える事がたくさんあった。

水曜日の放課後は、習字や生け花の習い事。
生け花の先生からは、着物の着付けも習ったので、今でも一人で着物を着られるわよ。
たまには、さぼったりもしたけれど、頑張ってかよい通したわ。

それは、父がいつもこう言っていたからなの。
「いずれ日本に帰国したら必要になるからね。今から覚えておいた方がいいよ。」

いつもは優しい父だけど、日本語の言葉づかいや挨拶には厳しかった。
でもそのおかげで、日本に帰国した今、極端に困ったことはまだ…ないわね。


中学校の3年間は、お琴を習ってた。

毎年、現地の日本人会のお祭りがあってね、そこで琴の演奏を聞いたの。
かっこよかった〜。
私も弾いてみたい。
それが琴との初めての出逢いだった。

教えてもらったのは、日本人のおばあちゃん先生。
竹を割ったような性格で、教え方も厳しかった。

何回も辞めようと思ったけれど、くやしくてできるまで練習して
次のお稽古にはできるようにして行ったの。

日本人会のお祭りにも、参加したわよ。

何を弾いたかですって?

「春の海」よ。
ほら、よくお正月になったらテレビから流れるゆるやかな琴の曲。

チャン、ララララララン。
っていう曲。
聞いたことない?

すごく練習したから、曲のさわりだけだったら、今でも弾けると思うわ。

おばあちゃん先生は、お元気かって?

実は、私が高校に進学した頃に先生は日本に帰国してしまったの。
クリスマスカードの交換はしていたので、日本に来日してすぐに会いに行ったわ。

私のことは、よく覚えてくださっていた。
「あなたは、よくがんばってお稽古にきていましたよね。
おさらいもきちんとしてました。
とても感心していましたよ。」

「先生。そんなうれしいこと…、初めて聞きました。
ありがとうございます。」

「すっかり大人になって…。どこから見ても、素敵なお嬢さんね。」

おばあちゃん先生は、現在、高校で顧問としてお琴を教えている。
自宅でもお稽古をしているとのこと。
「若い方たちと一緒にお稽古するのは大好きよ。」


今回びっくりしたことは、先生のお宅。
日本家屋の大豪邸で、お庭もすごく豪華。
美術館といってもいいくらい。
先生のご自宅は、あの原宿の道を一本隔てたところにあるのだけれど…。


おばあちゃん先生、あなた様はいったい何者ですか。