多田野 フー子
☆わたしはマギー
マギー、火事だ〜逃げろ事件

                                                         
マギーが叔母さん宅で、留守番をしていたある日の午後。

リビングのソファーに横になってテレビを見ていたら、ベランダの外にフル装備の消防士が現れた。

クレーン車の先に箱がついているタイプの消防車に乗っている。


ポカーンとして見つめていたら、
「火事です。今すぐ逃げて下さい。」

マギー「えぇ〜。」

消防士「ベランダからこちらに移って下さい。救出します。」

マギー「は、はい。」
思わずスマホだけを握りしめて、消防車に乗り移った。

5階とはいえ、「箱」の消防車に乗って下まで降りるのは、ドキドキだ。

マンションの下には大勢の人がいて、皆、マギーを見上げている。
救急車も来ている。

無事、地上に着いたら、盛大な拍手をもらった。


マギー「よかった。助かった。ありがとうございます。」

消防士「はい。これに横になって〜。」

指を指されたのは、担架である。

マギー「あの〜。わたし、怪我はしていませんが〜。」
消防士「いいから、いいから、横になって下さい。」

首を傾げながらも、素直に従うマギー。

腕に腕章をつけた人が、そのようすを写真に撮っていた。

担架のまま、救急車に乗せられサイレンを鳴らして発車した。

左折を何回か繰り返した後、救急車は停車。
そしてドアが開いた。

んん?
マンションの前?

消防士が、
「はい。お疲れ様でした。ご協力ありがとうございました。」

マギー「あっ、はい。」

消防士「はい。それでは、これで終了します。」

ここでマギーは、気づいた。

これは、消防の訓練だ。
そういえば、叔母さんが、そんなことをいっていた。

消防の訓練があるけれど、上の階の人が、選ばれて訓練に参加するから、何もしなくて大丈夫よ、って。

大丈夫なんかじゃな〜い。

その時のマギーは、
裸足、
部屋の鍵なし、
お財布なし、

マギー
「あの〜。もう一度、この消防車で部屋に戻して頂けませんか。」

消防士「いや、それは規則でできません。」

マギー「鍵を忘れたので、部屋に入れないんです。」

消防士「管理人室に、鍵、ありませんか?」


管理人室…。

聞いてみました。
保安上の観点から、今は鍵を預からなくなったとのこと。


頼みの綱は、叔母さんのみ。

ただ一つ、持って逃げたスマホで叔母さんに連絡をする。

叔母さんが帰るまで、管理人室で待たせてもらった。


管理人さんがいった。
あなたが、消防訓練で消防車や救急車に乗ったかたですか。

6階の自治会会長の奥さんが乗ると聞いていましたが、変更になったんですね。

区の広報担当が、取材にみえるといって、朝からきれいにお化粧して、張り切って準備されていましたが…。

うわ〜っ。
消防士さん、5階と6階を間違えたんだ。


後日、区の会報紙には、防災訓練の記事と担架に乗せられたマギーの写真が載っていた。



お騒がせマギーの快進撃 は 本回で おしまい。
フーコの次回作 乞うご期待 !