多田野 フー子
☆わたしはマギー
マギー 買い物に走る 《後編》

                                                         
大学生のマギーは、一日だけ旅行添乗員のアシスタントになった。
これが想像していたのとは大違い。
お昼を食べる時間もなく、ひたすら、旅行客のおみやげを買いに走り回るマギーである。


「あぁ、君を待っていたよ。」
今度は中国人の男性客だ。
「鍋を買いたい。」

その鍋は、合羽橋に売っているという。

すぐに合羽橋に直行。

大きな鍋専門店を見つけ、お目当ての鍋を探す。

中国人客 「この鍋がほしい」
マギー 「(えぇ〜。このお鍋30万円もする〜。)
この鍋は2,700ドル以上しますよ。」
中国人客 「Yes. I want to buy two.」
マギー 「TWO〜.
いやいや、鍋2つも買わなくていいから。1つでいいでしょう。」


それを聞いていたお店の人、「ちょっと、通訳さん。2つ買いたいって言ってるんでしょう。邪魔しないで下さいよ。ちょっとどいて下さい。…お客さん、これは最高級の赤の鍋(銅鍋)ですよ。…今、お包みします…」

あ〜ぁ、しかられちゃった…。でも、2個で60万円以上もするのよ。1個で十分だと思うけどなぁ〜。

中国人客 「どうもありがとう。いい買い物ができたよ。あと、スマホのケースがほしい。」

マギー 「お土産ですか?スマホのメーカーはどこでしょうか。」

中国人客 「いやいや、色々なメーカーのスマホケースを買いたいと思ってね。
できれば、30個以上ほしい。」

マギー 「それでは、携帯ショップへ行きましょうか。」

何軒もの携帯ショップをはしごして、可愛いものからシックなもの、個性的なもの…こんなの誰が使いたいんだ?と思うようなものまでたくさん買っていた。

マギー 「大家族なんですね。」
中国人客 「あぁ、これはおみやげではなくて、ビジネス用だよ。」

マギー 「……?」
中国人客 「このスマホケースと同じものを作って、中国で売るんだよ。
飛ぶように売れるよ。」

マギー (…だから30万円のお鍋をいくつでも買えるんだ…。)

中国人客 「日本製は、デザインも品質も最高だからね。」
マギー   (知らなかったとはいえ、…コピー大国の片棒を担いでしまった…。)

またまた中国人のお客さんに呼び止められる。

「美味しいどら焼き、30個買いたい。」

マギー 「美味しいどら焼きって、何? どら焼きはどれも美味しいでしょうに。」

こういう時は、お巡りさんに聞くのが一番。
雷門の近くの交番に行き、尋ねる。

禁じ手を使う。
本当はだめだけど、自分の容姿を利用して、日本語が話せない外国人を装う。
「アイ アム ルッキング フォー ドラヤキ。

オイシイ  ドラヤキ カイタイ。ドコ?
Help me please!」

お巡りさんが、美味しい どら焼き屋さんを教えてくれた。

やさしいお巡りさん、どうもありがとう。

そのお店にお客さんとダッシュ。無事に買えました。


イタリア人カップルが、ニコニコして帰ってきた。
「あのお店、パスタが美味しくて、すぐに料理が出てきて、おまけにフリードリンクがあって最高だよ。
個人的には、パスタはイタリアよりもうまいと思うよ。
その上、値段がとてもリーズナブル。

すごく気に入ったから、次回、日本に来た時にまた行くよ。いいお店を紹介してくれてありがとう。」


あぁ〜。
よろこんでもらえてよかった〜。

でも、アシスタントはもうこれっきりにしようと思う。

あぁ〜。それにしても、おなかがすいた。

あっ、サイゼリアに行こう。






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