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2015.6.1
太宰が暮らした「碧雲荘」後世に 取り壊し 区が計画 署名活動や情報発信
 
       
太宰が一時暮らした「碧雲荘」
=東京都杉並区天沼3丁目
  五所川原市金木地区(旧金木町)出身の作家・太宰治(1909〜48年)が暮らした東京都杉並区の民家兼アパート「碧雲荘(へきうんそう)」の保存を目指す活動が地元で行われており、本県からも「協力したい」との声が上がっている。
敷地は福祉施設などの新設のため、既に区によって取得され、このままでは建物も取り壊されるという。
本県にも太宰ゆかりの建物を保存・活用している例があることから、その関係者らは「何とか残したい」と碧雲荘の周知などに尽力する考えだ。

 
碧雲荘は杉並区天沼3丁目にあり、建築者の孫が所有している。昭和初期に建築された2階建ての民家兼アパートで、太宰は1936年11月〜37年6月に2階の一室で暮らしたその間「人間失格」のもととされる「HUMAN LOST」を執筆した。

 しかし、区が碧雲荘の敷地と隣接地に福祉施設などを建てる計画のため、地元有志らが昨年12月に「荻窪の歴史文化を育てる会」(会長・岩下武彦中央大学教授)を立ち上げ、碧雲荘の現在地での保存を目指す署名活動を展開している。同会によると、区は来年6月の着工を目指しており、碧雲荘の敷地を同年4月ごろに更地にする方針という。
サミットで碧雲荘の保存を訴える世良さん(左端)
=5月30日、東京都杉並区

 その碧雲荘の保存について考えようと、5月30日、同会主催の「緊急開催!太宰サミットin荻窪」が杉並区内で開かれ、弘前ペンクラブ会員の世良啓さん、太宰の叔母きゑの孫で太宰治検定実行委員長の津島克正さん(五所川原市)らが参加した。

 世良さんは、太宰が旧制弘前高校時代に下宿した弘前市の「太宰治まなびの家(旧藤田家住宅)」を同クラブが管理・運営していることを紹介「(まなびの家が)今になって価値が出てきている。碧雲荘を残す活動に協力することが本県の太宰関係者の務め。全国の太宰ファンに呼び掛けたい」と語った

 津島さんは、太宰がきゑ宅を訪ねた際に寝泊まりした蔵の部材を、地元中心街の活性化施設に活用した取り組みを説明し、「(碧雲荘を)壊してしまえばおしまいぜひ残したい」と情報発信に努める考えを強調した。

 教材の販売などを行う「学校図書」社長の奈良威さん(旧金木町出身)も会場に駆け付け「全国の子どもが(教科書などで)太宰文学を学んでいる(太宰ゆかりの建物は)残す価値がある」と語った。

 署名活動は今年いっぱい行われる予定。碧雲荘の保存を目指す活動への問い合わせは、荻窪の歴史文化を育てる会(TEL03―3391―1527)